「子供たちの復讐」 本多勝一 (2)
テーマ:心に残るこの一冊(13)
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「罪と罰」を読み返して、ラスコーリニコフ的なエリート主義を考えていたら、この本を思い出した。これは、79年に出版された、<開成高校生殺人事件>をルポした作品だ。
家庭内暴力に苦しんだ父親が開成高校2年生にひとり息子を絞殺したというのがその事件だった。この本では、さらにもう一つ、
今度は高校生自身が殺人を犯し、自殺したという事件もルポされている。いずれの高校生も、有名校のエリートと見られている高校生だった。
本多勝一は、ジャーナリストらしく、感情を抑えて事実を追い求めることによって、この事件を単に悲劇として捉えるのではなく、
その当時の教育の問題として鋭く捕らえている。そして、この問題は20年以上経ったいまでさえ、まだ解決していないのではないかと思われる。
いまだに、この高校生たちのようにエリート主義に毒されている若者は多い。
この単行本では、祖父を殺して自殺した少年の遺書が載せられている。大衆に対する大きな侮蔑感と、自分が正しく評価されていないと思う、
迫害されたエリート意識とは、まさにラスコーリニコフだと思った。この少年の遺書は、文庫本になったときは、掲載を拒否されたと思ったので、
確か単行本のほうにしか載っていない。古本屋で見つけるか、図書館で探さないと読めないだろうと思う。
そういえば、この本で僕は初めて河合隼雄を知った。それ以来ファンになって、河合隼雄も僕のお気に入りの著者になった。
「罪と罰」に続いて、この長編ルポも読み返してみようかと思う。昔の事件を扱ったものであるのに、今読んでもきっと色あせることがないだろう。
小説でなくても、優れた本は、きっと何度読み返しても新たな発見があるに違いない。
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