「無文字社会における言語とは口頭言語のことであるが、口頭言語には二種類ある」
「文字の誕生」とは「その祭祀言語を記録するためのものであ」り、「占卜という儀礼で用いられた言語の記録が甲骨文である」
「人間は発明するよりも模倣するのが一般的であ」り、「その時代まで中国に車輪付きの乗り物はなかった」ので、「中国人は二輪馬車を持って西北からやってきた人々からその完成された工作物を取り入れたのである」
「甲骨文を絵文字レベルの字形のまま言語を記録する条件を具えたという認識の上に立つので、図象文字を基本形と考える」
「紀元前2000年代のメソポタミアで「奴隷」を意味したある表意文字は「山」の印と「女」の印の組み合わせになっている」が、「これは、山岳地帯へ軍隊を送って略奪を行うなかで連れてきたか、おそらくは奴隷商人との物々交換で交易品と引き替えられた女性のことだ」
「戦争目的の大部分が奴隷の獲得だったとすれば、こうした軍事遠征は、従来型の戦争としてではなく、むしろ奴隷の略奪という視点で見た方が筋が通る」
殷墟から出土した卜辞からは、殷王朝が周辺の異民族に対する「人狩り」の戦争で、多くの人たちを捕まえてきたことがわかるので、殷王朝も奴隷獲得のために大規模な戦争を行っていたと考えられる。
そうすると、殷後期の戦争に使用する二輪馬車の導入は、奴隷狩りの戦争の成功の確率を大きく増したと考えられる。